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For the RUSH's blog トレイルランナーの記録

夢見る夢

 遠くに連なる峰々の上にようやく昇ってきた朝日を横目に、激しく喘ぎながらガスに煙る岩稜を風のように駆け抜ける。急な登り斜面では膝押しで駆け登り、下りでは天狗さながら、岩から岩へ転がるように、走る、走る、走る。


 彼方まで一本につながった岩場の稜線は、幾度となくアップダウンを繰り返し、それでも緩やかに標高を上げ続けている。早月尾根にとりついてからもうすぐ1時間、剣岳はすぐそこだ。


 暗いうちから富山湾を出発し、里を駆け抜け、これまでノンストップで走り続けてきた。
 目指すは彼方に見える稜線の、その向こう遥かに屹立する槍。疲れはまだないが、今日中にたどりつけるだろうか。しかし、おそらく槍についたとたん、終着点は通過点へと変わるだろう。
 頼りは自分の心臓と足、強い心、少しの冒険心、そしてたっぷりの好奇心だ。


 やがて剣岳に飛び出る。朝日を見ていた多くの登山者が、振り返り、その形相に驚いた様子だったが、目を合わせる間もなく通過する。
 そして、目指す次の目標、薬師岳に向かって走り始める。


                        @@@


 最近、よくこういう夢を見る。


 それは、剣から槍までのワンデイラン、あるいはTJARに強く惹かれているからなのだとおもうが、単純にもっと強く、速く、遠くまで、いつまでも走っていたい、という潜在意識が夢を見させるのだろう。


 同じ夢でも、積み重ねたレッドポイントトライの果てに、想い続けるルートを完登する瞬間の夢は、熱く爆発的な達成感を伴う分、目覚めた後に自分をひどく落ち込ませたものだ。
 しかし、対照的に自分が「走っている」夢はそんな夢ではない。それは幸せな夢。
 目覚めた後も幸せは続き、夢の続きを想わせる。
 そして、それが自分を山に向かわせる原動力となっている。


 夢の中を走り続ける自分は疲れを知らない。峰から峰へ走り続ける。そんな夢をいつまで見続けられるかと、夢見るこの頃である。
by y-yamatn | 2010-07-15 21:32 | トレイルラン